祈りを捧げよう。
燃えるような紅い髪を持つ彼等に。
道を違えてしまった幼なじみに。
「ガーイ。」
ペールに見繕ってもらった花束を抱えて宮殿から足を踏み出した、その時に名前を呼ばれた。
声の方に振り返れば胡散臭い、けれど優しい光を持った紅い目。
「なんだい、旦那?」
「いえ。陛下から、貴方が数日休みを取ったと聞きまして。」
「待ち伏せ、かい?」
「とんでもない。…ご一緒させていただいても宜しいですか?」
静かに笑うその顔。
きっと、俺が何処に向かうかも、何の為に向かうかも解っているのだろう。
此方も静かな笑みを返しながら「ああ。」と頷いた。
「早いものですね。月日が流れるのは。」
其処へ向かう途中の船の中、唐突にジェイドは言った。
「二年と、少し前までは、ルークの事大っ嫌いでした。」
清々しいまでの笑顔でそう言い放つ。苦笑いを浮かべるしかないのは、当時は自分も多少なりと不満を感じていたからか、それともそういう風に育てたのが自分だからか。
ふと、ニッコリした横顔に、違和感を感じてつついてみる。
「てことは、二年と少し前からは好きなのか?」
瞬間、弾かれたように顔の向きを変え、
僅かに見下ろす目と目が合った。
紅いそれは今、まん丸と見開かれていて。
正直、こっちが驚いた。
そんな顔する旦那なんて久々すぎる。
「…旦那?」
「成る程…そういう見方もあるか。」
「は?」
「いえ…」
そこでいつもの胡散臭い笑顔に戻って。
「好きだとは一言も言ってませんよ。」
相変わらず意地っ張りだな、と心の中で呟いてみる。
…あまり重要でもなさそうなので、
話を反らした事はこの際気にしないでおく。
「ガイ、顔に出てます。」
「え!?」
「大方、意地張ってるなんて思っていたのでしょう?」
「っ、」
図星をつかれてぐうの音も出ない。
…何故バレた。
「…貴方、分かり易くなりましたね。」
「そっ、そんな事ないだろ!あんた程じゃないが、それなりにポーカーフェイスは得意なつもりだ!」
「出逢って暫くはそうでしたね。」
「…"だった"?」
「ええ。きっと今の貴方の事なら、ティアやアニスはお見通しでしょうね。」
天然にドが付くお姫様はわかりませんが、
と付け足された。
もう少し先まで考えたけど微妙すぎて削った。