僕は「アニキ」が大好きだ。


いつもバカな事やって、
1人で突っ走って、
それても、暗く沈んだ雰囲気を取り去ってくれて…。

…僕の事を「弟」って言って、
頭をくしゃくしゃ撫でてくれて。





もし、この度が終わったら、きっと「アニキ」はペトナジャンカに帰るんだと思う。
「アニキ」はシスコンだから、きっとセレーナさんを放っておくなんて出来ない。





…でも、そしたら僕の「兄弟」は?

ワガママだなんて分かってる。
それに、僕にはユージーンっていうお父さんもいる。


だけど僕は…
バカやって盛り上げてくれる「アニキ」が、
どこまでも真っ直ぐで、本音を隠そうとする事なんてない「アニキ」が
大好きなんだ。

だから、離れたくないんだ。



なんて、本当に僕は愚かなのかもしれないね。





はぁ、と溜め息が漏れた。

それから直ぐに頭に手が乗せられる。



「どうした、マオ?変な物でも食ったのか?」



的外れな心配をしてくれたのは、
僕が愛して止まない「アニキ」だった。



「変な物って…ティトレイじゃあるまいし。」

「んだとー!?」



いつもの様に返せばそれで大丈夫だと判断したらしい。
威嚇するように直ぐさま決して勢い付けはしない拳を振り上げる。
僕はそれを分かった上で



「わーっ、ティトレイが虐めるヨー!」



叫んだ。

既に慣れてしまった仲間達は、溜め息や微笑みを浮かべながら僕達を見ていた。



…この瞬間が、一瞬一瞬が、本当に楽しい。
僕は心からそう思う。

だからこそ、この日常が壊れる日を恐れている訳で。


気持ちが顔に出てしまっていたのだろうか。
次の瞬間には、また頭にポンと僕のよりも無骨な手が乗っていた。



「本当に大丈夫かよ?」

「…うん、何でもないって!さ、早くしないとみんなに置いてかれるよ!」

「うぉっ、急に走るなー!」



もう大分前の方にいる仲間を追いかけて、「アニキ」の手を引っ張る。
抗議の声は無視して、身長差でバランスを崩しているティトレイも無視して。




本当に、本当に、
こんな日常が、沢山できた家族と、ハシャいでいるのが、楽しくて。
それはもう、このまま旅が、終わらなければいいのに、なんて…
思う…くらいに………。



「……ねぇ、ティトレイはいつまで僕の「アニキ」で居てくれるの…?」



呟いた問い掛けは、風に流されて消えた。

僕はきっと、高望みをしてはいけないんだと思う。
だから、せめてこの瞬間を覚えておこう。


ずっと、ずぅっと、「アニキ」を忘れない為に。





不意に、手がほんの少しだけ握り返されたような気がした。




end.

一年前のもの。
誰か他の方のマオティトを読んでみたい・・・。