「ティトレイって何で攻撃力低いの?」



ヒルダだけならず、マオにまで気にしてる事を訊かれた。(正確に言えばヒルダは「攻撃力の低い前衛をきる」と言ったのだが。)



「そっ…それは…拳とボウガンが武器なんだからしょうがないだろ!?」

「じゃあ何でヴェイグみたいに剣とか、ユージーンみたいに槍とか…とある少女戦士みたいに斧とか使わないの?」



痛いところを突かれ、「うっ」と言葉を詰まらせた。
それでも俺はなんとか理由を絞り出す。



「俺にはヴェイグみたいに教えてくれる人も居なかったし…
今から使い始めてもみんなに迷惑かけるだけだろ?」

「まぁそりゃそうなんだけど…それって我流?」

「ん?ああ。」

「…ずっと工場で働いてたのに、なんで曲がりなりにも拳術とかボウガンとか使えるの?」



そうきたか。
理由は、無いわけではない。

しかし、それを言ったら…ほぼ確実に、マオにバカにされるだろう。
ああ、目に見えてわかる。


言えないでいると、マオが助け舟のような発言をした。



「もしかして、工場の警備もやってた〜とかそんな感じ?」

「そっ、そうそう!強盗とかあってさぁ…」



しかし、希望は一瞬のうちに砕かれる。



「そんな訳ないよね、白々しすぎるし。」

「ぐっ…」



マオは少し俯くと上目遣いにこちらを見やってくる。
それも切なそうな目で。



「それとも…僕には言えないこと?」



元々顔立ちが中性的で、まだ幼さやあどけなさが残っているもんだから
まるで女の子をイジメているようで段々と居たたまれなくなってくる。

例えそれがコイツの作戦で、技だとしても。(以前からこの手口には何度も引っかかっているので、流石の俺でも罠だとわかる。)

それでも、ずっと負けっぱなしじゃダメだと思った俺は突っぱねる。



「だっ、ダメだ!何度も何度もその手には乗るか!」

「…何度も何度も乗ってた癖に………。」



…とりあえず、聞こえないフリをしておこう。



「しょうがないなぁ…」



そう言って溜め息を吐かれる。

おい、しょうがないってなんだしょうがないって。
なんて言おうとしたら、両二の腕を掴まれた。



「よいしょっ…と、」

「え?」



次の瞬間、なんとマオに押し倒されていた。



「…後衛、しかも4歳下に簡単に倒される前衛って凄く頼りないんですけど。」

「今のは卑怯だろ!つーか早くそこ退け!」

「やーだよ。」



ニッと笑って、顔を近付けてくる。
俺はなんだか目に威圧感を感じて身動きが取れなくなってしまった。



「さて、ティトレイ?」

「な…何だよ?」

「このまま僕にキスされるのと、正直に言うの、どっちがいい?」



選ばせてあげる。

………………………………。
…………………はぁっ!?

きっと俺は間抜けな表情だっただろう。
や、でも誰だっていきなりそんな事を言われれば固まるに違いない。


キキキキキっ、キスだぁぁー!?

自慢にもならないが、俺は「ふぁーすと・きす」もまだだったりする。
自分なりにシチュエーション考えたり、シミュレーションしたり…まぁ、色々しているのである。
それを、こんなガキんちょなんかに奪われた日にゃ多分俺はもうお婿に行けなくなるだろう。
あーもー、自分で考えてて意味わかんなくなってきやがった!

兎に角、キスされるくらいならバカにされた方がまだマシだっ!!!



「わかった!言う!言うから退いてくれっ!」

「はいはーい。」



やっと解放したマオが、ほんの少し残念そうに見えたのは気のせいだろうか。



「…で?」

「その…俺の姉貴って美人だろ?」

「シスコン…」

「姉思いなだけだっ!…それでだ、姉貴にしつこく付きまとうやつもいるんだよ。」

「セレーナさんは迷惑がってた訳?」

「ああ。毎日毎日あの手この手でストーカーしやがるんだ。」

「それで?」

「そーいうヤツが後を絶たないんで、片っ端から撃退してたらいつの間にか…」



そこまで言い終わると、マオは蔑んだ様な視線と呆れた様な溜め息をした。



「なんだよ?」

「結局、セレーナさんの為なんだね。」

「…うっせ。」



否定出来る筈はない。
だって、本当の事だから。



「…………………ぃ…。」

「マオ?」



暫くの間「ふーん」やら「へー」やら言っていたマオが
ポツリと零した言葉はあまりにも小さすぎて聴こえなかった。




―と。


ぐいっ。



「わっ!?」



急に手を引っ張られる。

そして、


ちゅっ。


唇に何かが触れた。




―あ。今…




ボンッと音がしそうな程一瞬にして耳まで熱くなる。



「な…な、な……!?」

「言っとくけど、ティトレイが悪いんだからね!」

「なななっ、なんでだよ!?」

「さーねー?自分で考えてみればー?」



それだけ言い残して、心なしかほんのり赤みの増した顔のマオは立ち去ってしまう。



「…なんなんだよ……。」



顔の熱と、原因不明の動悸が治まるまで、
みんなの所には行けないなぁ、と思ったのだった。




end.

一年前のもの。
リバースのCPで一番好き!
なんでマオティト書く人って居ないんだろう・・・。
「ティトレイはセレーナの為に格闘技を覚えたが、それはむしろ工場の警備の為に使われている」という設定を確認せずに書きました。・・・み、見逃して!