「クレアァァァァァ!」



ああ、耳障りな声だ。










陛下の命令で行ったスールズ。
美的感覚のズレた牛がまだ綺麗な子を見つけられずに居たから、奥にいた金の髪の子を指してやった。

すると、その隣にいた銀髪がつっかかってくる。差し詰め恋人か何かだろう。
殺してやろうかと思って、ほんの一瞬だけ目を奪われる。


その目は憎悪と、女に対する庇護に溢れていて分かり難いが、
青年は確かに綺麗だった。

距離はあったが、透き通るように澄んだ蒼の眼、
きっと指を通せば滑るであろう美しい髪、
そして、筋の通った鼻とバランス良く配置された顔のパーツ。
背は高く、程良く筋肉も付いているのだろう、細いが貧弱なイメージは無く、スタイルも良い。
ほんのり雪焼けした肌のお陰で健康そうに見えなくもないが、どちらかといえば何処となく儚くて危ういイメージを受ける。

そう、彼が先程見せた氷、それで出来た繊細な細工のようであった。


―こんなキレイなモノ、初めて見た…。

僕は素直にそう思えた。
そして同時に壊したいという願望も芽生える。だって、綺麗なモノが散りゆく時程楽しくて、美しい瞬間はないだろう?

その綺麗なモノは、相も変わらず「クレア」と叫び続ける。僕としたことが、少しだけ嫉妬してしまった。
だってその視線は僕を捉えていないから。
全て美しい中で、その声だけが耳障りだった。ならば何も言えなくしてしまおうか。
そしてずっと僕だけにその憎悪の眼を向けていればいい。絶望に追いやって、追い詰めて追い詰めて、最後にゆっくり壊していくんだ。
ああ、なんて甘美な計画だろう。

今日のところは何もしないで引いてあげる。
僕を追いかけておいで、元隊長と脱走兵と共に。仲間は多い方がいい。その方が絶望させやすいから。
「その時」になったらどうしてやろう。仲間の前で…いや、「クレア」の前で犯してやろうか。そして見ている者の命を奪って…。
考えただけでゾクゾクするよ。
君はどんな顔をするだろう。悲しむのだろうか。呆気にとられるのだろうか。憎むのだろうか。…その目に何も映せなくなるのだろうか。

僕はその時を今か今かと待ちわびているよ。
だから、早く早く。



僕の手で壊れていって。





君との出逢いは最高だった。

唇が弧を描くのを抑えもせず、それは今までで最高の笑みを象っていた。




end.

サレにとっては最高、ヴェイグにとっては最悪の出会い。
一年前のもの。
ドSサレ様の一方的な歪んだ愛情が好き。