「…ね、ねぇ、クンツァイト?一体何があったの?」
自分達が留まる筈の宿屋。
その食堂への扉を開くと別世界が広がっていた。
地獄絵図。
それ以上に相応しい言葉は果たして存在するのだろうか。少なくとも、俺の語彙力で探し出すのは難しい。
…ヒスイがパーティーの女性陣に囲まれている。
それだけ聞けば両手に花どころかお花畑だ。
でも今のヒスイはもっと別のお花畑を見ている気がする、河の向こう岸に。
一行の兄貴分は部屋の真ん中で阿鼻叫喚していた。
「…女王茸、を覚えているか?」
クンツァイトはどこか遠い目をしながら話し出した。
「うん。ノークインの素材屋さんで買えるやつだよね?…女の人が食べると女王様になっちゃうっていう。」
「肯定。…酒に酔ったイネスが美容にいいからとリチア様、コハク、ベリルを誘い、」
「…まさか」
「厨房を借りて焼いて食べ出した。それも、あの時より遥かに多い量を。」
雪の女王鍋を食べた時の事を思い出して顔をひきつらせる。
クンツァイトの遠い目を見て悟った事は、
きっと止めるにも止められなかったであろう事だ。
繋がったスピリアからも何となく諦めを感じる。
「ヒスイは何も知らないまま味噌付き焼き茸を食べたコハクの元へ向かった。」
「そ、それであんな事に…」
「肯定。」
因みにヒスイは今、どうなっているかというと…
…ダメだ!言えない!
恐ろしいのもあるし、単純に言葉に表すのが難しいのもある。
「…とりあえず、頑張れヒスイ。」
女性陣に気付かれぬよう、小さくエールを送った。
END.
オマケ。
このままこれが続くようなら、今日は晩御飯抜きかな。
そう思った瞬間、先程以上にお腹が空いてきた。
グー…。
「あ。」
元気に鳴いた腹を手で押さえ、恐る恐る部屋の中央を見る。
ギラギラと輝く八つの眼光がこちらを見詰めていた。
「あらぁ、シング。イイところに来たわね?」
「シング…私達の部屋、来るよね?」
「ヒスイも、もう飽きましたし。」
「シングの方がよさそうだしね!」
ちょっと待って、一体何の話をしてるの?
そう問う間も無く、忍び寄る(主にオーラが)黒い影。
コハクの白い手が俺の肩を掴む。
「あの、コハ」
「来 る よ ね ?」
「…ハイ。」
涙を流しながらクンツァイトを見やる。
彼はその時に限って目を合わせてはくれなかった。
…俺、死ぬかも。
これから起こるだろう事を想像し蒼くなりながら、イネスに抱えられて食堂を後にした。
「………。」
ただ一人の生き残りは
無残な姿になっている仲間にムリヤリライフボトルを飲ませて回収し、
自分達の部屋へと向かった。
彼がシングを次に見るのは三日後の朝の事。
おわり。
遂にやっちまった、女王茸ネタ。
もっと女性(むしろコハク様)×シングっぽくするつもりでしたが色々足りませんでした。なんて事ない普通のギャグになっちゃった。
そして未だにクンツァイトの口調が解らない。動かし難いよ!
今回の功労賞は兄ちゃんだと思います。一言も喋ってないけど。とりあえず合掌。
妖しい雰囲気の女王コハ×シン書きたい!(なんか言ってる)