どこまでも広がる草原。旅の途中で見つけた大きな木の下に、俺は寝そべっていた。
本当は急がなくてはいけない旅なのだけれど、だからこそ偶にはこんな休息が必要だ。この頃は体にも、スピリアにも、衝撃的な事が立て続けに起こっていたのだし。そう言い出したのが誰だったかは忘れたが、皆賛成して(クンツァイトは反対したけどリチアに説得された)、今日の午後このよく目立つ木の下に集まる約束をして去って行った。別れたのは昨日だ。
後数時間もすれば皆来るかな。そう考えて大きな欠伸をする。
シーブルまで帰っている時間は無いから近くの町で必要な物を補充して町を見て回った。村から出た事が無く、今までの旅だって観光している余裕の無かった俺にとっては珍しい物のオンパレードで、田舎者丸出しにハシャいでいた。ヒスイが居たらきっと殴られていただろう。そう思うとホッとしたけれど、少しばかりの寂しさを覚えた。
イネスは一人帝都に走ったようだ。ベリルはきっと画材を見繕っている。クンツァイトは思いの外ウキウキとしたリチアに連れられてレストラン巡りに行った。
コハク、コハクは今頃どうしているだろう。彼女はヒスイと一緒にどこかに行った。行き先、訊いとけばよかったかな。あ、でも「明日までのお楽しみ」って言ってたな、と楽しげなコハクを思い出す。
一つ思い付いて起き上がった俺は近くの花畑まで歩いて目当ての物を探す。直ぐに見付かったそれに微笑んでそっと手を掛けた。
*
「シング、一日ぶり!」
そう声高々に叫びながら走ってきた少女に同じ言葉を笑って返した。
「お土産だよ」と笑って渡される袋を覗き込んで目を丸くする。味噌のたっぷりついた焼きそばとケバブ。
「闘技場、行ってたの?」
「うん!お味噌は私のマイミソだよ!」
眩しい笑顔に少し照れながら笑い返して袋からケバブを取り出しかぶりつく。味噌は正直微妙だけれど、(コハクの味噌だし)美味しかったから気にしない事にした。
「美味しいよ」って言えばまた彼女は笑った。
そこに、コハクと違って歩いてきたヒスイが追い付く。
「よぉ。コハクの蹴り、スゴかったぜ。スペシャルランクを瞬さ」
ヒスイは最後までセリフを言うことなく地に沈んだ。コハクの、目にも留まらぬ鳳凰天駆が炸裂したからだ。
…コハク、優勝したんだ。すごいなぁ。
ヒスイの二の舞になるのは嫌だったから心の中で賞賛した。
「そ、そうだ…俺もコハクにプレゼントがあるんだ。」
とりあえずヒスイだった物からは目を背けて、食べかけのケバブを袋の上に置く。
腰を下ろした脇で周りの緑にとけ込んでいたそれを掴んでこっちを向いたコハクの頭に乗せる。
花冠と呼ばれるそれはとても彼女に似合っていた。
コハクがゆっくりと取ってその正体を見る。
「すごい…!お花でこんなの作れるんだね!」
「俺の家の庭、小さいけど花畑があるんだ。昔それを使って近所のお姉ちゃんが教えてくれたんだよ。花冠っていうんだ。」
「…ねぇ、シング。私にも、作り方教えて?…シングに、作ってあげたいの。」
「えっ…う、うん、いいよ!」
二人で笑っていたら、いきなり後ろから何かで叩かれた。
頭を押さえながら振り向けば、ブスッとしながら筆を構えたベリル、ニヤニヤしたイネス、いつものように無表情のクンツァイト、苦笑いのリチア、そしていつ復活したのか、不機嫌そうなヒスイが俺達を見ていた。
「み、みんないつの間に…」
「さっきからずっとだよ!二人こそ、いつまでボク達を無視して二人の世界作ってるんだよ!」
「さぁて、気が済んだならそろそろ出発したいんだけど?」
ベリルの言葉に顔を真っ赤にして、
イネスの言葉に勢い良く頷いた。
目的地の方向に進み出した一行を、俺はコハクのお土産、コハクは俺のプレゼントを抱えて追い掛けた。
隣を足早に歩くコハクにそっと耳打ちをする。
「世界が平和になったら花冠の作り方、教えるね。」
コハクは一瞬驚いたような顔をして、おひさまの笑顔をくれた。
「じゃあ、がんばらなきゃ!」
コハクが居たから、俺は世界を守ろうと思ったんだ。
コハクが笑う、この世界を。
見上げた空はどこまでも深く、青く。
空に浮かぶ白い月は嘆きながら俺達を見下ろしていた。
END.
時間軸は…再集合後って事以外あまり考えて無い。場所はシャルロウ辺りだと思います。
ケバブ、食べたことないから味わかんないけど…きっとシングはコハクへの愛でカバーしました。恋は盲目(黙)
ハーツ布教の為にペーパーで無料配布しました。ごめんなさい、ネタバレ無しは無理でした。リチアとスピルーン回収後のコハク出してほのぼのしたかったんです。じゃないと私のスピリアが堪えられな(ry)
初シンコハ!コハク様は「華麗に参上」のあの方を瞬殺してきたようです。私のDSのコハクじゃ無理です。イネスで楽勝しました。それよりも二回戦目がキツかった。ソーマビルド、全部緑でやったから。
次はコハシン書きた(ry)