「イネスちゃん、お茶会してみたい!」
蒼い髪の綺麗な幼い少女が、絵本を抱えて目を輝かせながら言った。
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「クッキー焼けたよ!」
簡素なティーカップで安物の紅茶を飲んでいる私たちの前に、
香ばしい匂いと共に狐色のクッキーが乗ったお皿が置かれる。
ひと仕事終えたシングに新しい紅茶を入れて手渡すと、彼は満面の笑みで感謝を述べた。
発端は、先日イネスがラピスに買った絵本。
お話の中でキャラクターが行う「お茶会」に憧れた彼女が期待を込めた眼差しでおねだりをしたからだ。
世界を救った後、私とベリル、そしてシングはイネスとラピスについて旅を続けている。
普段は文字通り世界を飛び回っている私たちだが、急ぎの仕事もないのだしゆっくりするのもいいか、という話に纏まって
元居た位置から一番近いメンバーの故郷であるシーブルで行う事になったのだ。
足りない材料はここに来るまでに購入した。
美味しそうなクッキーに真っ先に手を伸ばしたのは、勿論ラピス。
いい音をさせて噛み砕いた少女は幸せそうに口元を綻ばせた。
「美味しい?」
シングに問いかけられて花の咲いたような笑顔で勢いよく頷くのを見ながら私もクッキーを一枚頂いた。
うん、流石私のシング。すっごく美味しい。
「シングくんはお料理上手ね!ラピス、シングくんのお嫁さんになりたい!」
げほっ!
私と、ラピスに続いてクッキーを頬張っていたベリルは同時に咳き込んだ。
紅茶を飲んでいなかったのがせめてもの救いだと思う。
シングは少し照れくさそうに微笑み、イネスは苦笑いを浮かべていた。
「ラピス、お母さんとしては応援してあげたいけど…それにはコハクを倒さなくちゃいけないわよ?」
「シングくんとコハクちゃんはラブラブだもんね。大丈夫よコハクちゃん、思っただけだから。」
紅葉のような手でポンポンと頭を軽く叩かれ、曖昧に頷くしか出来なかった。
「ら、らぶらぶって…」
「そこは否定してあげないよ?いっつも見せ付けてくれちゃってさぁ。」
「そんな事してない!」
「…天然なカレシ持つと大変だねコハク〜?」
顔を真っ赤にして俯くシングの向こうにうんざりとしたベリルが居た。
目で「なんとかしろ」、と言われてる…気がする。
「そ、その話はこれくらいにして、クッキー!食べようよ!せっかくシングが焼いてくれたのに冷めちゃうよ!」
元気よくラピスが頷いた。
「誤魔化した。」そんな呟きは右から左に流す。
固まったままのシングの頭を撫でた。
「シングも食べよう?紅茶もクッキーも温かいうちに。」
「うん…そう、だね…!」
五人で賑やかなお茶会。
絵本の中みたいに決して優雅ではないけれど、
とても楽しい時間だった。
蜂蜜入りの甘いミルクティに
サクサクのクッキー。
ゆったりとした騒がしさに
思わず零れる笑い声。
優しい木漏れ日に目を細め、
目線を向ければ微笑む貴方。
偶にはいいね、こんな日も!
END.
相互記念で雪乃久様に捧げます。
レスすらも遅くなり、すみませんでしたorz
ほのぼのな割にドタバタしてますね…勝手にシンコハシンにしてますね…。
その上よくわからないのにラピスに手ぇ出しました。一人称ってラピスで合ってますか…?(おま)
ごめんなさい!
こんな物でよろしければお納めください!
苦情返品は雪乃様のみ受け付けます。
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