柔らかな日差しに薄く目を開け瞬きをゆっくり数回。
大きな欠伸をしたところで違和感に気付いて胸の辺りに纏わりつく何かに手を伸ばした。
「…ん、……?」
心地よい冷たさと少し苦しい圧迫感。
無意識にその何かを辿れば着いた先は有り得ないモノだった。
「漸く起きたか、我が器よ。」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
場所も考えず上げた叫び声に緋色の魔王は顔をしかめる。
すぐさま距離を取ろうとしたがしっかりと抱き込まれていて抜け出せなかった。
「どうしたシング!?」
バン、という大きな音に出入り口を見れば触れたところ全てを壊しかねん程に勢い付いたヒスイがいた。
パジャマのままで髪が乱れている。
恐らく彼も今さっきまで寝ていたのだろう。
俺の為に駆けつけてくれたんだ、と思うとスピリアが暖かくなった。
「ヒスイ、助けてー!」声を投げれば、
綺麗な紫眼が俺の背後に気付いてそれを睨み付けた。
心無しか殺気を感じる。
「クリード…テメェなんでこんな所に居やがる!」
「私がどこに居ようと私の勝手だろう?」
「ああそうだ。だがなぁ、シングに汚ねぇ手で触んのはやめろ!」
「断る。それに結晶人の手が原界人より汚いなどあるものか。」
「テメェ…!」
どこから取り出したのか、ヒスイがソーマを構える。
クリードも俺を押さえているのと逆の手を伸ばして魔法陣を展開させた。
…って、ちょっと待って!
「二人とも!宿屋壊す気!?」
「「安心しろ、壊さない、殺るだけだ。」」
「なんでそんなセリフだけハモるの!?」
俺の叫び虚しくいよいよ思念術が発動しようとしたとき、なんとも表現しにくい音が二つ聞こえた。
例えるならば、鉄球を何か硬いものに当てて壊して、更に爆破したような…。
自分でもよくわからないけど、本当にそんな音だから仕方ない。
何が起こったのかは見えなかったけど、
目の前に広がる光景のお陰で、音の発生源には直ぐ気付いた。
頭から煙を出して倒れているヒスイの向こう側にソーマを構えたイネスがいる。
いつの間にか圧迫感が消えていて振り向けば同じく床に沈んだクリードと直立不動のインカローズがいた。
「朝から煩いのよ。ヒスイ、ドアに罅入ってるから弁償ね。」
「クリード様、こんな所で油を売らないでください。」
イネスは欠伸をかきながら用事は終わったとばかりにさっさと出て行く。
インカローズも窓の開く音の後に気絶したらしいクリードを抱えて飛び降りて行ってしまった。
「…大丈夫?」
ベッドから這い出てヒスイの側に座り込。
クリード同様意識が無いらしく反応が返ってこない。
横に回ってゴロンとひっくり返す。
鼻を摘むと苦しそうに唸ったから、思わず吹き出してパッと指を離した。
「急いで来てくれて…クリードを怒ってくれて、すごく嬉しかったんだ。」
起きる気配が無いのを確認して頬にキス落とした。
「ありがとう、ヒスイ。」
顔の熱が下がってから起こす為に肩を揺する。
浮かぶ微笑みは一日中潰えなかった。
END.
相互記念で青吉様に捧げる「ヒスシン←クリ」です!素敵リクありがとうございました!
クリード様が報われない…すみません;;
苦情返品お持ち帰りは青吉様のみでお願いします。
それでは、相互ありがとうございました!
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