早朝、久しぶりの温かなベッドから身体を起こして顔を左に曲げた。
清潔感溢れる真っ白な、けれど既にしわくちゃな掛け布団を
抱き締めるようにして眠るシングが視界に映る。
どうやら安眠しているようだ、とホッと息を吐いた。
シングと、右隣のベッドで電源を落としているクンツァイトを起こさないように慎重にシーツから這い出る。
バカシングが風邪を引いたら大変だ、色々と。
そう考えて、箪笥に仕舞われている予備の毛布を抜き取った。
ぐっすりと眠っているシングに近付き、毛布を掛けてからあどけなさの残る寝顔をじっと見詰める。
普段は寝顔どころか起きているときだってまともにシングを見ることが出来ない。
と、いうのも目が合うだけでスピリアが燃えるように熱くなるのだ。
指先が触れた時なんか、熱が顔にまで伝わってしまい、熱があるのかと余計な心配をかけた位に。
詰まるところ、俺はシングに淡い恋心を抱いて居るのだった。
…キス、してぇ。
無防備な表情を見ていると、そんな欲求がスピリアに宿る。
だいたい、健全過ぎる男子に「好きなヤツと一つ屋根の下で寝ろ、ただし手を出すな」と言う方が無茶なのだ。
それも、隣のベッドで。
(反対側にはクンツァイトが居るが、この際誰が居ようが気にならない。俺の全意識はこのアホに向けられているのだから。)
こんなに早くに起きている理由だって、シングが気になってなかなか寝付けないからだ。
目元に掛かっている茶髪を軽く手櫛で払ってやる。
体制的に口は無理だから、目元に唇を寄せた。
「ん…ヒス、イ…?」
下から声がして勢い良く離れる。
仰向けにゴロンと寝返ったシングは舌足らずな声で「どうしたの」と訊いた。
「テメェが腹出して寝てたから、毛布掛けてやっただけだ!勘違いすんなよ、お前が風邪引いて出発が延期になったら困るからだからな!」
一気にまくし立てる俺に、目を擦ってからフニャリと笑いかける。
可愛くて優しい笑顔にスピリアの熱が急上昇したのを感じた。
「ありがと…ヒス…イ…。」
幸せそうな微笑みを俺に向けたまま、シングは再度健やかな寝息をたて始める。
…反則、だろ?
真っ赤な顔を抱えて、俺は暫くその場に蹲るしかないのだった。
惚れた俺の、負け確定。
END.
888ヒットを踏んでくださった青吉様に捧げます。
リクは「付き合う前の甘酸っぱい青春なヒス→シン」…そ、添えてませんね…!すみません!
これじゃただの変態兄さんだ…!
お持ち帰り、返品、苦情など、青吉様のみ受け付けます。
こんなので良ければ好きにしてやってください!