夜な夜な、特別な思念術を用いて器に同調するのは
やはりその憎しみの心地よさが忘れられないからだ。

私を解放する程の憎しみを開放して尚、この少年は勘違いをしている。
否、思い込んでいるのか。

スピリアの中、対峙した器は闇色の瞳で私を見ていた。
何も映さない、曇ったガラス玉で私を睨んでいた。

少年は私とガルデニア、そして自分だけに憎しみを向けている。
堆積する憎しみ全て。
それは殺気となって、今この瞬間も私の喉元を鋭く貫いた。
しかし、ヤツは天性のお人好し。
憎んでいる事に気付いても完全には憎みきれないのだ。
そして溢れた感情の矛先は自分に向く。
つまり彼は世界ごと殺しそうな殺気を自らに向けているのだった。



「…殺して、やる。」



ポツリ。器が呟くように漏らした。
その言葉がトドメを刺さんとしているのは、やはりヤツ自身なのだ。

先ほど「私を見ていた」と言ったが、語弊があるので訂正しよう。
曇ったガラス玉は何も写しはしない。
つまり、何も見ていない。機能していないのだ。
憎悪に塗りつぶされた瞳は。
私どころか、命懸けでスピルーンを直した少女すらも。

なんて寂しいスピリアだろうか。
そんなスピリアを救う方法を人知れず思案する。
そして導き出した答えは。



「器…いつか、貴様のスピリアをガルデニアの糧としてやろう。」



永劫共に居てやろう。





私の人格を模した、黒き星の中で。

ずっと…。




END.

1000打でリク頂きました、「ゴミ箱に入ってるクリシンのような物」です。
なんかズレてる気もします…すみません…。